増田セバスチャン様

先輩の紹介から、アーティスト・増田セバスチャン様プロデュースによる店舗装飾のお手伝いをさせていただく機会を得ました。

日本で展示されていたものが海外に持って行かれたという事はこれまでに経験しておりました。そういった案件はHP等での情報公開がNGな場合も多いのですが、今回はアーティストご本人にご快諾いただいた上で紹介させていただきます。

HP上で公開できない案件などについては、ご連絡いただければご覧いただくことが可能です。お気軽にお問い合わせください。

場所はニューヨーク、「ちょっと補修に行ってくる」というようなことが出来ないくらい離れています。最初から海外でお披露目という案件はこちらが初めてでした。

天井から吊られている猫3匹と口紅型の照明器具を製作させていただきました。
3匹の猫たちはゆっくりと回転するような仕掛けになっており、それぞれ顔の後ろ側が寿司のネタであったり唇であったりと、まずはその奇想天外なデザイン画から見せていただきました。全体の色使いはパステル調で、マグロの上には緑のソースが掛かっていたりシャリも青やピンクで描かれており、それは私たちの常識をくつがえすものでした。

ニューヨークと日本を行き来されているセバスチャン氏とは、京都の山奥にある弊社に何度も来ていただき入念に打ち合わせを行いました。お話を伺っていて、私たちは今回のお話が商業立体造形物でありながら作家性が滲み出てくる作品であると感じ、それを表現するためには工夫が必要だと考えました。ポイントは不思議なタッチで描かれた「猫の目」と設定し、そこで通常の制作方法の目と瞳孔部分を凹んだ形状にしてエポキシ樹脂を流し込んだサンプルをいくつか制作して検討していただきました。最終的に宇宙のフィルムを瞳の裏部分に仕込んで内側から照らす内照式となりました。

従来製法で作られた目
試行錯誤の変遷
成型によって気泡ができてしまうトラブルや熱収縮対策のため2回に分けて注型する手間など、いろいろなことがありました。

高さが50センチほどの大きいリップスティックは実際に天井に吊られる照明器具として成立させる必要があり、当初はマスター原型を一つ作って型取り・FRP成形という方法で考えていましたが、内部の照明灯故障の際の交換を含むメンテナンス性や周りに付くダイヤモンドの飾りの固定方法、製品の色ごとの入角、塗り分け時のマスキング作業、最終製品における気温などによる変形を考慮し再度リップの設計をしなおしました。最終的に、先端部分は透明FRP、円柱部分は塩ビ管、リングなどは3Dプリント、という仕様で対応しました。写真ではわかりづらいですが、初めて使う塗料(㈱オリジンのミラー調塗料)のおかげもあり、とても高級感のある仕上がりに持っていくことが出来ました。

今回も初めてのことだらけな案件ではありましたが、ニューヨークでは3000人もの予約待ちがあるそうで我々としても嬉しいかぎりです。